音楽の著作権などを管理している団体「日本音楽著作権協会(以下JASRAC)」は、2017年2月2日、ヤマハ音楽教室など楽器の演奏を教える教室から著作権料を徴収する検討をしていることを発表。
それに対し、ヤマハ音楽教室や河合楽器製作所はなど7企業・団体は、「音楽教育を守る会」を結成し、JASRACの方針に反対することを表明しました。
そして、7月にも「教室での演奏には著作権は及ばない」として、JASRACに支払い義務がないことの確認を求める訴訟を東京地裁に起します。
しかし、JASRACは著作権料徴収の動きを音楽教室に留まらず、さらなる広がりを見せようとしています…。
ここでは、JASRACの著作権料徴収の仕組みや、広がる対象者などをご紹介します。
◆JASRACの仕組みと問題って?
JASRACは音楽の著作権を持つ作詞・作曲者、音楽出版社などから著作権の信託を受けて、音楽の利用者に対する利用許諾(ライセンス)、著作権使用料の徴収と権利者への分配、著作権侵害の監視などを主に業務としています。
JASRACが管理する音楽の著作権・使用料に関する大まかな流れは以下の図の通り。
JASRACは音楽を使用した人や企業から使用方法、回数に応じて著作権料を徴収し、作詞家や作曲家などの著作権者に分配しています。
ただし、音楽の使用料の徴収について、ここ数年活発な動きと徴収範囲を広げており、やりすぎではないかと物議を醸しています。
例えば、京都大学の学長が入学式の式辞で引用した、ボブ・ディランさんの歌「風に吹かれて」の一節を大学のホームページに掲載。
JASRACが掲載した分の使用料を京都大学に請求していることが2017年5月18日判明。これについて、京都新聞がJASRACに対して取材を行うと、大学入学式の式辞のように、商用目的で無くても歌詞を印刷できる仕様でウェブ上に掲載すると、1回の閲覧につき「数十円が必要になる」場合があると説明。
仮にそのページが何十万と閲覧されたとしたら、とんでもない額の使用料を払わなければならないことになります。もちろん、消費税もきっちりつけて請求することでしょう。
結局、京都大学の式辞の問題について、JASRAC側が著作物が自由に使える「引用」と判断し、京都大学には請求はしないということで話は落ち着きました。
しかし、JASRACは「一般的には、著作権法と過去の判例が引用に当たるかどうかの判断基準になるが、京都大学の事例が判例と同じように扱われては困る」とコメント。
このコメントの裏を返せば、著作権法と過去の判例に則ってと言いつつも、結局のところJASRAC様の一存でどうにでもなるということです。
さて、そのJASRACの一存で、世を騒がせているヤマハ音楽教室の問題について次章でご紹介します。
◆音楽教室から著作権使用料をとる?
著作権料の支払いを巡り、JASRACと音楽教室との対立が深刻化しています。国内で39万人の生徒を抱えるヤマハ音楽振興会が運営する教室からJASRACは来年1月以降、年間受講料の2.5%を著作権料として徴収する方針だそうです。
2017年6月7日(水)、JASRACは音楽教室での演奏について、2018年1月から著作権料の徴収を始めると会見で正式に発表し、文化庁に使用料規定を届け出ました。
使用料規定には、JASRACが管理する作品を教室で演奏した場合、受講料収入の2.5%相当額を徴収するとのこと。当面は楽器メーカーが運営する教室を対象とし、将来的には個人教室からも徴収するそうです。
ちなみに、条件を限定して、ごくごく単純にヤマハ音楽教室がJASRACにどれぐらい徴収されるのか計算をしてみました。
条件:
①ヤマハ音楽教室(国内)/39万人
※39万人をジュニアスクール(基礎コース)に限定。ちなみに、ジュニアスクールの対象は小学1~3年生。
②レッスン料金:6,500円(税抜・月額)
③1年間、一律2.5%を掛ける
6500×12(1年間)×0.025=1950円(年間徴収料)
390000(生徒数)×1950(円)=760500000
約7億6000万円となりました。ヤマハ音楽教室に通う1年~3年生のいたいけな小学生でもこの額。ちゃんと計算するともっと徴収額は上がるでしょうね。
もし、JASRACの主張が通ったとして、教室側だけで多額の金額を負担することは考えづらいです。ということは、結局、生徒である子どもの親御さんたちが負担するのは容易に考えられます。
JASRAC側は会見で「訴訟は避け、話し合いで解決したい」なんて言ってます。でも、徴収の準備はガンガン進めておいて、話し合いとはいかがなものかと…。
いずれにせよ、こんなやり方が通じるようでしたら、JASRACの主張がどんどん広がりを見せそうな感じがします。街でJASRAC管理の音楽が聞こえてきただけでお金取られたりして…(笑)さすがに、ないか…。
JASRACの浅石道夫理事長に取材した報道番組「NEWS23」(TBS)によると、
「商売でお使いになるのであれば、利用した分の対価について、ぜひ払っていただきたい。
『(音楽教室は)学校教育とは全く違でしょ』というのが私たちの基本的なスタンス」
一方、音楽教室側の「音楽教育を守る会」の三木渡会長は
「昨年、最後通知のように『徴収に入る準備に入ります』というご連絡をいただいた次第です。
一般の個人や法人が経営している教室は、教育ではないと、そこで線を引かれることに、皆すごく腹を立てています。」
と同じくTBSの取材に応じています。
また、ヤマハ音楽教室や河合楽器製作所など「音楽教育を守る会」は、すでに約3万人分の徴収反対の署名を集めています。
そして、7月にも「教室での演奏には著作権は及ばない」として、JASRACに支払い義務がないことの確認を求める訴訟を東京地裁に起こす方針を固めています。
この問題について司法がどういう判断を下すのか注目ですね。
◆2016年度著作物使用料の分配額ランキング
JASRACは5月24日、2016年度の放送や演奏、CDなどから徴収した著作物資料量の分配額を発表。最も多かった2008年度(約1155億円)に次いで、過去2番目に多い分配額(約1125億円)となりました。
1位/糸
2位/名探偵コナンBGM
3位/ドラゴンクエスト序曲
4位/R.Y.U.S.E.I
5位/ひまわりの約束
6位/365日の紙飛行機
7位/おそ松さんBGM
8位/トリセツ
9位/ルパン三世のテーマ'78
10位/歩いて帰ろう
参照元:共同通信
●まとめ
JASRACのことを調べれば調べるほど、この団体は魔窟なのかと思えてふるえそうです。音楽って自由と精神の発露のはずなのに、その裏でこんなおかしな団体が暗躍していることに不思議さと不信感を感じずにはいらないです。
本当に正しく徴収した著作権料が該当者に分配されているのかは、正直なところわかりませんよね…。以前、ツイッターで見たことがある話ですが、一節だけの使用でも著作権料は徴収されるそうですが、分配はされないとのこと。
そんな事例なんて山ほどあるだろうし、いちいち検証なんてできませんよね。音楽関係者でJASRACとの関わったことがある人ならもっと詳しく闇を知ってるのかもしれませんけど…。