2017年2月5日(日)、第66回別府大分毎日マラソン(以下、別大マラソン)が開催されました。大分市と別府市を舞台に3,900人を超えるランナーがエントリー。今年の夏に行われる世界陸上(ロンドン)の選考レースも兼ねており、注目の大会となりました。
ちなみに、世界陸上のマラソン代表は4つの大会の結果から協議され代表が決まります。このうち、すでに2016年12月に行われた福岡国際で日本人トップの3位になった川内優輝選手(埼玉県庁)が代表選手選考のテーブルに乗っています。
ここに別大マラソンで優勝した中本健太郎選手もテーブルに乗ることになります。なお、2013年の別大マラソンでは、中本選手と川内選手らは2人で14キロに及ぶ激しいマッチレースを演じたのは語り草になっています。その時、中本選手は惜しくも2位。今回の優勝は喜びもひとしおではないでしょうか?
それでは、別大マラソン男子の結果(10位まで)と優勝した中本選手のプロフィール、2017年8月4日からイギリス・ロンドンで行われるマラソン代表選手の選考基準の要綱などを合わせてご紹介します。
第66回別府大分毎日マラソンの結果(男子)
順位 | 名前 | 所属 | タイム |
優勝 | 中本 健太郎 | 安川電機 | 2:09:32 |
2位 | デレジェ・デベレ | - | 2:10:23 |
3位 | 木滑 良 | MHPS | 2:10:30 |
4位 | 大石 港与 | トヨタ自動車 | 2:10:39 |
5位 | 伊藤 太賀 | スズキ浜松AC | 2:10:52 |
6位 | ハリル・ルムシェ | - | 2:11:58 |
7位 | 鈴木 卓也 | 愛三工業 | 2:12:08 |
8位 | 岩田 勇治 | MHPS | 2:12:15 |
9位 | 日下 佳祐 | 日立物流 | 2:12:42 |
10位 | フェリックス・ケニー | - | 2:13:33 |
中本健太郎選手について
中本 健太郎(なかもと けんたろう) | |
生年月日 | 1982年12月7日(34歳) |
出身地 | 山口県下関出身 |
出身校 | 西市高-拓殖大学 |
所属 | 安川電機 |
<自己ベスト> | |
5000m | 14分04秒31 |
10000m | 28分54秒59 |
ハーフマラソン | 1時間2分29秒 |
マラソン | 2時間8分35秒 |
中本選手は中学時代は野球部でしたが、山口県立西市高校入学を機に、野球から陸上に転向。拓殖大学では、4年生の時に箱根駅伝を経験。7区を走り区間16位という成績を残しています。
高校、大学と全国レベルの選手ではなかった中本選手ですが、安川電機入社後、転機が訪れます。安川電機駅伝部の山頭直樹監督の勧めでマラソンに挑戦。
初マラソンとなった2008年延岡西日本マラソンで3位。同年北海道マラソン2位と好成績を残しました。その後、2011年びわ湖毎日マラソンで2時間9分31秒を記録し、日本人2番目の4位でゴール。この結果から世界陸上テグ大会(韓国)の選出。初の日本代表となります。なお、中本選手の所属する安川電機陸上部にとっても史上初の日本代表選手となりました。
さて、世界陸上では日本人2番目の10位で惜しくも8位入賞には届きませんでしたが、団体(各国の上位3名の合計タイムで競う)では、見事銀メダル獲得に貢献。
中本選手は自分のペースでレースを運ぶことを得意としており、マラソンでは非常に安定した走りを強みにしています。その安定ぶりと2012年びわ湖毎日マラソンで日本人2番目の5位の成績と実績から、ロンドン五輪男子マラソンの日本代表に選出されました。
ロンドン五輪でもアフリカ勢のペースに引きずられることなく自身のペースを守る走りを徹底します。そして、後半から順位を少しずつあげ日本人最高位となる6位入賞の成績を残しました。
ロンドン五輪終了後も調子を落とすことなく、翌年2013年には、後の語り草になる別府大分毎日マラソンで川内選手と14キロに及ぶ激しいマッチレースを演じました。この結果が評価され、再び世界陸上(モスクワ)に選出。
この世界陸上では5位入賞の結果を残し、五輪、世界陸上と世界大会で2大会連続入賞を果たしたのは中本選手が初となりました。
その後、体調不良や足の負傷などで大会を欠場するなど結果を残せず、リオ五輪の代表を逃すことに。なお、中本選手は代表を逃しましたが、同じ所属の北島寿典選手がリオ五輪代表に選出されました。
そして、実績のある選手でありながら、マラソン14回目の挑戦となる今回の別府大分毎日マラソンで念願の初タイトルを獲得。3回目の世界陸上代表選手の結果が待たれます。
世界陸上マラソン代表選考基準について
世界陸上ロンドンのマラソン男子代表選手に選ばれるためには、以下の選考基準が定められています。
<選考対象の競技会>
・第70回福岡国際マラソン選手権大会
2016年12月4日実施
・東京マラソン2017
2017年2月26日実施
・第72回びわ湖毎日マラソン大会
2017年3月5日実施
・第66回別府大分毎日マラソン大会
2017年2月5日実施
▼選考基準
(1).内定条件
福岡・東京・びわ湖で日本人1位
かつ、2時間7分以内(2016年1月1日以降)の記録を持つ競技者
(2).選考条件
福岡・東京・びわ湖で日本人3位以内、または、別府大分毎日マラソンで日本人1位の競技者のなかから選考
代表選手の選考方法は、福岡・東京・びわ湖で日本人1位になり、かつ2時間7分以内の競技者は即時内定が決定します。
また、世界陸上エントリー選手が(1)内定条件の上限の枠を達していない場合、選考委員会での代表選手の選考が行われます。その選考選手の条件は選考基準「(2).選考条件」に当てはまる選手です。
この選考委員会では、各選考競技会での記録、順位、レース展開、タイム差、気象条件などを考慮し、世界陸上での活躍が期待されると評価された競技者を選出すると定められています。
なお、2017年2月5日現在、内定選手はいませんが、選考条件に当てはまる選手は、以下の通りになります。
◆福岡国際マラソン
・日本人1位
川内 優輝(総合3位)/2:09:11
・日本人2位
園田 隼(総合4位)/2:10:40
・日本人3位
前田 和浩(総合10位)/2:12:19
◆別府大分毎日マラソン
・日本人1位
中本 健太郎(総合1位)/2:09:32
●まとめ
以上のように、2月5日現在では4選手が選考条件に当てはまります。ただし、タイムなどを考慮すると、やはり川内選手、中本選手の2選手が代表候補として現在、選考委員会のテーブルに乗っているでしょう。
また、川内選手のタイム2時間9分11秒が選考基準と考えられており、このタイムは今後、東京・びわ湖を走る選手にとってプレッシャーになるだろうと別府大分毎日マラソンの番組内で語られていました。
ちなみに、中継を見てて先頭集団にいなかった木滑良選手(MHPS)が総合3位に入ったのには驚きでした。また、マラソン初挑戦となった大石港与選手(トヨタ自動車)が2時間10分台の記録を出して今後注目したいところですね。
さて、別府大分毎日マラソンの場合、他の大会と違って日本人1位以外は代表候補として選考委員会のテーブルに乗ることすらできないんですよね。35km過ぎからガンガンに追い上げた木滑選手が日本人2位になったとはいえ、選考から漏れることに…。まあ、タイム差で1分近くあるので代表に選ばれるのは難しいかもしれませんが、とにかくシビアな世界だと感じます。
最後に、東京マラソンは2月26日、びわ湖毎日マラソンは3月5日に開催されます。東京マラソンでは今井正人選手や大学生・下田裕太選手ら有力選手が登場します。世界陸上ロンドンの代表選手の座を掛けてどんな戦いになるのか今から楽しみです。
東京マラソンの国内招待選手のプロフィールについてはこちらからどうぞ
東京マラソン2017│男子国内招待選手のプロフィール一覧